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「機甲戦記ドラグナー」(1987年)

アニメ脚本家烈伝:<壱の巻>〝ロボットアニメの職人”五武冬史(鈴木良武) その八

 ついに富野リアルロボット王朝が落日の日を迎えた。ダブルゼータガンダムのあまりの酷さに、バンダイが切れてしまったのだ。筆者としては、良くぞここまで延命したという意味で、富野監督を高く評価したい。それはそれとしてこの後、富野監督もまたこの後辛酸を舐め続けることになるのだが。

 さてここでバンダイが望んだのは、第二のガンダムに他ならない。すなわちゼータドラグナー、ダブルゼータドラグナーが作成可能な作品だ。こうした状況になれば、〝サンライズの特攻隊長”(第五法則)である五武先生をおいて、他に人材などあるはずも無い。ボトムズから4年の歳月を置いて、五武先生に二度めのガンダム超えのチャンスが訪れたのだ!。五武先生の実力を、満天下に知らしめるのだ~!!

 ここで五武先生が視野に置いたのは、ガンダムだけでは無かったはずだ。右目でガンダムを見据えると同時に、左目ではマクロスを見ていたに違いない。ここで五武先生は空前絶後のコンセプトをドラグナーに導入しようと図る。このコンセプトは、現在に至るも後継者が現れていないのだから、如何に斬新だったか判ろうというものだ。そのコンセプトとは・・・、ずばりリアルロボットアニメへの、誘導ミサイルと電子戦の積極的な導入である。敢えて〝誘導ミサイル”という誤法を用いたが、本来ミサイルと言うのは誘導兵器であり、必ず当たるようにできているものだ。従って大抵のアニメで〝ミサイル”と呼んでいる兵器の大半は、実は〝ロケット兵器”のことであり、これはガンダムに置いても例外ではない。そもそも一番最初の「マジンガーZ」からして、腹から出るロケット兵器を「ミサイルパンチ」と呼称し、腕を飛ばしてコントロールして相手にぶつける兵器を「ロケットパンチ」などと呼んでいるのだから、話にならない。逆だろ、名前が!。

 そんなわけで五武先生は、ドラグナーをガンダムはおろかマクロスすら超える、究極のリアルロボットアニメとして完成させる決意を固める。マクロスは誘導ミサイルを持つ地球軍が、実弾(まあビームとかもあるんだけど)兵器しか持たない異星人のメカをぶち殺していく話だ。しかし敵味方の双方が誘導ミサイルを持ってしまったら、果たしてどうやって見せ場を作ればいいのだろう。五武先生は一瞬して答えを導き出す。「三号機を電子戦専用機にすれば良い」。・・・完璧だ~!!!。・・・っていうか、誰か止めてやれよ~(泣)。五武先生の言っていることは100%正しい。これこそ究極のミリタリー、リアルロボットアニメの鏡だ。五武先生が最先端のミリタリーについてよく勉強していることも、とてもよく分かる。しかしそれで面白い話が作れるかというと、それは全く別の話だ(特に監督の力量が・・・の場合は)。少なくとも視聴者が付いてこさせるのは、非常に難しいことだろう。

 ドラグナーの第一話が完成しそれを見た時、一号機に向けて撃たれた無数の誘導ミサイルを三号機が電子戦で攪乱して一発も当たらなかったシーンを見た神田監督は、五武先生に頭を下げると「勘弁して下さい」、と言ったと伝えられる。誘導ミサイルを電子戦で叩き落すような設定では、到底一年間ドラマを作っていくことができないということだったらしい。筆者としては、神田監督に対して〝この根性無しが!!”としか言い様がない(故人ではあるのだが)。五武先生に構成を任せると言うことは、同時にこうしたリスクを一緒に抱え込むことに他ならない。そのことは過去の作品を見てくれば、自明のことである。少なくとも五武先生にだけは、こうした世界観でも面白いドラマを作っていける自信があったのだと思う(なんか、凄く見てみたくなってきた)。それを今更三話にして路線変更を強いる(第一法則)とは、監督として先見の明が無さ過ぎるとしか言い様がない。というか、どうせ止めるなら、もっと早く止めてやれよ!。

 余談であるが、筆者が知る限り、誘導ミサイル(魚雷なのだが)と電子戦を用いた秀逸なアニメが、原作付きながらこの10年以上後に作られることになる。かわぐちかいじ原作の「沈黙の艦隊」である。深海で反乱潜水艦「やまと」と米軍の「シーウルフ」が様々な種類の魚雷を、虚虚実実の駆け引きを行いながら撃ち合う姿は最高にエキサイティングだ。ちなみに「沈黙の艦隊」の監督は〝高橋良輔”、脚本は”吉川惣司”。筆者としては、ちょっと笑ってしまうところではある。

 かくしてドラグナーは、最悪のスタートを切ることになる。五武先生の前衛的なコンセプトを失ったドラグナーは、単なるガンダムの亜流(それもできの悪い)に過ぎなかった。ガンダム超えなんて、夢また夢。五武先生の悪いところが全て出尽くした展開(例えば主人公をめぐる妹キャラとお姉さんキャラの恋の鞘当は、妹キャラが勝つものとあだち充の「みゆき」によって定められていた。しかしそういた作法を知らない五武先生は、平気で主人公をお姉さんキャラとくっつけてしまうのである!)は、ついにリアルロボットアニメのテレビ枠事自体を消滅させてしまう結果となる。まあバイクメカが、後に富野監督のVガンダムにパクられるといった功績も無くは無いのだが、視聴者に見放された番組である以上、何を言っても無駄だろう。

 恐らく敗戦責任を取らされたであろう五武先生は、この後しばらくリアルロボットものを作ることなく雌伏の時期を強いられることになる(もっともリアルロボットアニメ自体がこの時期、ほとんど無かったのであるが)。しかし神は五武先生を見捨てなかった(というか、リアルロボットアニメを構成できる力量のある脚本家が、ほとんどいなかったということであるのだが)。ドラグナーから4年後、こともあろうに新作のガンダムのシリーズ構成に対するオファーが五武先生に舞い込むのだ。その作品の名は・・・「機動戦士ガンダム0083」!

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コメント

>電子戦で叩き落すような設定

そうだったんだー。当時、途中で見なくなった理由はもう覚えてないけど、ついていけなかったのか路線変更がいやだったのかは不明です。地味だなと思った記憶はあるんだけど。

>「沈黙の艦隊」の監督は〝高橋良輔”、脚本は”吉川惣司”。

これも見落としといえば見落としていた事実かも。。。

投稿: harada | 2005.08.25 01:26

>敢えて〝誘導ミサイル”という誤法を用いたが、本来ミサイルと言うのは誘導兵器であり

それは違う
ちゃんとguided missile(誘導ミサイル)という用語があるのだから誤用でもなんでもない
そもそもミサイルの本来の意味は投射体、投石、飛び道具という意味でラテン語の投げるからきている


あとリアルっつうけど…射程の長いビーム兵器やレールガン兵器みたいものが本当に開発されたらミサイルの地位は一気に低下しますよ。
なぜ今ミサイルの地位が高いかというと迎撃が困難だから。
その困難な理由が、ミサイルを打ち落とす方法として、飛んでくるミサイルに対してミサイルを撃ち込むか実弾を撃ち込むか…ようするに飛んでくるミサイルにたいして同じ速度がそれより遅いものを撃ち出して撃ち落とそうとするわけです。
しかも実弾だと真っ直ぐ跳ばないという
だから当てるの非常に至難

これがビームでミサイルの数百倍も超高速でしかも有効射程では偏向偏差がほとんどないようなのが開発されると…
ミサイル迎撃の世界は劇的に進化していのは簡単に予想できます。
わざわざ偏差を計算せずにミサイルに向かって撃てば当たるんですからね。
08小隊にでてきたジムスナイパーの狙撃銃みたいにビーム出しっぱなしでグリグリやれるやつなんかあったら、飛んでくるミサイルにむかってビーム出しっぱなしで追尾させればいいだけですからね
拡散ビームみたいなのをCIWSに使えば近接迎撃の精度は撃ち漏らしはほぼでないでしょう


使い捨てのジェットエンジンやロケットエンジンで出せる速度に限界のあるんでミサイルではビーム兵器の登場進歩による迎撃能力の向上についていけなくなり地位が低下するというのは十分おこるというか確実におこる事象になるでしょうから
ミサイルの運用方法などは変わるでしょう

投稿: 犬 | 2016.12.06 12:14

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