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「鉄腕アトム第56話〝地球防衛隊の巻”」(1963年)

アニメ脚本家烈伝:<壱の巻>〝ロボットアニメの職人”五武冬史(鈴木良武) その二

 筆者が知る限り、五武先生(当時鈴木良武)が脚本を書いた、最も古い作品。そう、21世紀になってもアニメ脚本を書き続けている五武先生のデビューは、実に日本最古のテレビアニメである「鉄腕アトム」だったのだ。これは筆者にとって、非常に大きな衝撃だった。しかし御年を召しているということが、そのまま第六法則「萌えキャラが描けない」に繋がっているとすれば、それはそれで仕方ないことなのかもしれないが・・・。

 当然のことだが、「鉄腕アトム」は原作付き作品である。いきなり第二法則の〝オリジナル”に抵触している。しかし考えてみて欲しい。この時代、アニメといえばこの「鉄腕アトム」しかなかったのだ。それに対して五武先生はまだぺーぺーの新人でとても作品を一本任せてもらえるような状況ではなかった。ここはなんとか許していただきたい。その代わり「地球防衛隊の巻」は、手塚治虫の原作を持たない完全オリジナル作品である。ゲストキャラクターもストーリーも五武先生の完全オリジナルである。筆者はそれで十分だと思うのだが。

 ところで「地球防衛隊の巻」は、旧アニメ版の「鉄腕アトム」の中でも、最も重要な意義を持つ作品である。特に人気があるというわけではない。少なくとも以前BSでやってた人気エピソードランキングでは、ベスト50位にすら入っていなかったと思う。ストーリーは、紫色をした謎の宇宙人(以後二度と出てこない(笑))と地球防衛隊の戦士が光線銃でひたすら殺し合いをするだけの話だ。アトムは防衛隊の助っ人というわけ。アトムも宇宙人をばんばん殺しまくることになる。同じ戦争物でも、人気エピソード「青騎士の巻」はロミオとジュリエット風の叙情的なストーリーを横軸としているわけだが、五武先生にはそんな意識は欠片もありません(笑)。これを法則的に言うと、第三法則の「ミリタリー」な話で、第四法則の「バトルフィールド」は空気の無い別の惑星上(ゆえに一般市民の死亡者などは一切でない)、第六法則によって萌えキャラは無し(そもそも女性キャラは出てこない)、ということになる。

 ではこんな話のどこが特別なんだ、と言われるかもしれないが、実はこの「地球防衛隊の巻」は旧アトム全193エピソードの内で、唯一つカラーで作られた作品なのだ。当時カラーでアニメを作るのは、普通にモノクロで作る場合の数倍の予算が必要だったという。「地球防衛隊の巻」は劇場公開から海外進出、今後のカラー作品のプロトタイプという様々な意味合いを持った超重要エピソードだったのだ。そしてその重要な作品を任されるということが、他のスタッフの信頼が厚い(第五法則)ということで無くて、いったいなんだというのだろうか。

 クリエーターを論評する言葉に、「処女作にはその作家の全てがある」というものがある。この「地球防衛隊の巻」には、良くも悪くも五武先生の全ての法則が現れていることがわかると思う。え、第一法則の「途中で挫折する」が含まれていないって?。・・・実は「地球防衛隊の巻」は旧アニメ版アトムにおける、後にも先にも五武先生が書いた唯一本のエピソードなんだなこれが。やっぱり手塚治虫先生には、気に入ってもらえなかったんだろうか(泣)。

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