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五武冬史論<序章>

アニメ脚本家烈伝:<壱の巻>〝ロボットアニメの職人”五武冬史(鈴木良武) その一

 恐らく皆様は五武冬史(別称鈴木良武)というアニメ脚本家をご存じないと思う。私はロボットアニメが好きだったことから、五武作品をそれこそ浴びるほど見てきた。現在でもゲーム「スーパーロボット大戦」シリーズを一本やれば、五武作品に幾らでも会うことができる。私は80年代に起きた「リアルロボット」というムーブメントに対する功績は、ガンダムの監督である富野喜幸一人に起因するものではなく、むしろ五武先生にこそ、その大半の功績があると思っている。またエヴァ以前のアニメ脚本家の中では、五武先生は間違いなく五指に入る実力の持ち主であるのに、ほとんど代表作を持っていない。筆者はこの企画の中で、前半部では五武先生が如何にしてリアルロボットというムーブメントを立ち上げていったか、そして後半部では五武先生が実に20年もの年月をかけて、如何にして「機動戦士ガンダム」という怪物に挑みつづけたかということを記していきたい。

 次に述べるのは、五武先生の全作品に共通する”法則”である。エヴァ以前の脚本家は、起承転結がきちんとかける卓越した構成力(というか基本ができている、というべきか)の持ち主が多かったが、反面長所短所がはっきりしている、癖の強い脚本を書く人が多かった。五武先生も例外ではなく、優れた多くの長所と共に、若干苦手とする分野も併せ持っていた。その圧倒的な才能が、ほんの少しの苦手分野によって台無しになって行くのは、正直、非常に切ないものがある。しかしそれが五武冬史という生き方なのだ。エヴァ以降の、原作付き作品ばかり作っており、たまにオリジナル作品を作っても何もかも中途半端のうやむやでお茶を濁してしまうような若造どもとはわけが違うのだ。以下六つの法則を列記しておく。

第一法則:「五武先生は、必ず作品途中で挫折する」:いきなりで恐縮だが、事実なのだから仕方ない。私が知る限り、挫折(当初構想した先見性が有り過ぎる設定や思想が、凡人にはついていけないという理由で潰されてしまうのが大半。大抵は五武先生が正しいのだが、下手をすると10年以上たっても世間が追いついてこないことも多い・・・)が無かった作品は五武先生の膨大は創作物の中で、僅かに3作品しかない。なぜそうなるのかは、以降の作品解説で明らかにしていく。

第二法則:「五武先生は、オリジナルの、しかもロボットバトル作品しか作らない」:原作付き作品しか作れない、作家性の欠如したエセ脚本家どもに爪の垢をせんじて飲ませたいくらいの気持ちである。しかもただ作るだけだけではなく、それぞれの作品にオリジナリティの高い設定と思想を組み込み、一級の作品に仕上げるのである。五武先生に原作付き作品など、ありえないのだ。それにしても五武先生の作品リストを見ると、(少なくともガオガイガー以前は)その全てがロボットバトルものばかりなのは、見ていて壮観である。

第三法則:「五武先生は、SFとミリタリーに強くリアリティを重視する」:五武先生は当時としては珍しく、SFとミリタリーの両方を理解する数少ない脚本家であったし、これが結果として〝リアルロボット”というムーブメントに繋がっていくことになる。ただSFとミリタリーに強いといっても細かなデータが頭に入っているというよりは、センスオブワンダーの思想やタクティカルな考え方ができるという意味。

第四法則:「五武先生は、独自のバトルフィールド理論を持つ」:第三法則の延長になるのだが、五武先生はロボットが戦う場所に、非常にこだわりを見せる。ミリタリーに強かった五武先生は、民衆の避難が終わっていない都市部でロボットが殴り合いをすることの意味をきちんと理解している、数少ない脚本家であった。

第五法則:「五武先生は、スタッフの信頼が厚い」:これは本当に想像の域なのだが、これだけ前例の無い設定や思想を織り込んだ作品を作り続けられたのは、各スタッフの強い信頼があったからだとしか思えない。しかしそれでも諸般の事情によって、作品の方向性が五武先生の思惑から変わってしまうのは・・・ビジネスというものの難しさなのだろうか。特に日本サンライズ設立後は、〝サンライズの特攻隊長”として、初物には全て五武先生が投入されていくことになる・・・。

第六法則:「五武先生は、萌えキャラが描けない」:これは五武先生の唯一にして最大の弱点であり、そのせいでガンダム追撃の際には、何度と無く苦渋を舐めることになる。ことに美少女キャラの画一的な描き方(要は大和撫子。大人しいがしかっりしていて、男顔負けの高い能力を持ちながらも三歩下がって男の影を踏まず。大抵は黒髪長髪でパーマなんて論外。申し訳ないが、非常に時代遅れである。・・・せめて首藤剛志の半分もその方面に才能があれば、現在のアニメ勢力図は大きく書き換えられていたはず)は致命的。(あと実は、「大河ドラマ型」作品にはめっぽう強いが、「一話完結型」だとちょっと・・・)

※1:本文章は、五武先生をはじめとする関係者に、一切の了承・取材を行っておりません。事実関係に関しては大きな誤りは無いと思いますが、関係者の心情などに関しては、全て筆者の想像・憶測・妄想によって綴られております。本当だったらいいな~とは思いますが、根拠は一切ありません。全ての作品を見てきた一ファンの戯言ということでご了承ください。なお敬称略についても、敬意の表れということでご了承ください。

※2:今後の展開としては、〝ハードボイルドの帝王”吉川惣司、”スーパーヒットメイカー”星山博之、”日本SFアニメのルネッサンス”松崎健一、”世界への扉を開く男”首藤剛志あたりを。エヴァ以降では、”天才降臨”榎戸洋司、”特撮界のスーパーサラブレッド”井上俊樹、”同業者に天才と讃えられる男”倉田英之、辺りまでは最低でも行きたいのですが、・・・まあ一生無理だろうね(泣)

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コメント

おお、やや偏執的な文章を書く少年王3号氏にしては、非常に解りやすい文章を。

>・・・まあ一生無理だろうね(泣)
いえいえそんなことを仰らずに、是非~♪

投稿: 一伽貝 | 2005.08.16 20:42

いえいえ、2回目以降はいつも通りの、偏執的で判りにくい文章ですよ。

投稿: 少年王3号 | 2005.08.17 07:45

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