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My特撮感想文:「AI」

<洋画:2001年製作:TBS>

 ハリウッドで鉄腕アトムが実写映画化が図られているという噂を聞いたのは、何十年前のことだったでしょうか。このAIの話をを聞いた時もしやとは思ったのですが、オープニングテロップで「スタンリーキューブリック」の名前を見て、確認に変わりました、これが実写版鉄腕アトムの生まれ変わりだと。

 キューブリックが手塚治虫を高く評価していたのは有名な話で、映画「2001年宇宙の旅」を製作する時に、美術監督として手塚治虫を招聘したというのは有名な話ですね(ちなみに手塚は撮影が数年に及ぶという話を聞いて、「私には養わなくてはならないファミリー(虫プロのスタッフですね)がたくさんいるので、残念ながらお断りします」という手紙を書きました。キューブリックは「あなたがそんなに子沢山とは知りませんでした」という返信を返したといいます)。まあその企画を、スティーブンスピルバーグが引き継いだということなのではないでしょうか。

 正直言って、私はこの作品にさっぱり感銘を受けなかったのですが、まあそれはそれとして。この作品の前半と中盤は鉄腕アトムの「アトム誕生」(ディビッドが息子の代わりに家族として迎えられ、ロボットだという理由で追い出されるまで)と「ロボットサーカス団」(人間の欲望を満たすため、無意味にロボットを破壊するシーン)を換骨脱脂した内容ですね。そこまでは作品的には問題ないと思うのですが、問題はその先です。鉄腕アトムは、知っての通り未完の作品です。「アトム今昔物語」を最終回と捉える考え方もあると思いますが、鉄腕アトムが本質的に「人間とロボットの差別と相克」の物語だと考えると、最後まで人間とロボットは対等の関係を結ぶことは出来なかったし、ロボットが人間になることもできませんでした。したがってキューブリックも、この作品の中盤まで脚本を書いて、はたと困ったのではないでしょうか。だって天才手塚治虫にすら描けなかった鉄腕アトムのラストシーンを描かなければ、この映画は完結できないのですから。この企画が長年埃を被ってきたのもむべなるかな、というわけです。

 というわけで問題は、ロボットサーカス以降のシーンです。つまりスピルバーグのオリジナル脚本の部分です。正直言って・・・ボロボロですね(笑)。ジゴロジョーが何のために出てきたかも練りこみが足りないし、デイビッドを海に沈めるためだけ(のためとしか思えない)に地球温暖化でニューヨークを海に沈めたり、(ドラマツルギー的に)意味不明の量産型デイビッド・・・。そしていきなり2000年たって宇宙人ネタですか(笑)。「アトム今昔物語」と「2001年宇宙の旅」と「未知との遭遇」を足して・・・幾つで割れば良いんでしょうか(泣)。手塚治虫は生前、鉄腕アトムはピノキオをベースにした、という趣旨のことを言っておられました。結局スピルバーグはこの作品を「SF」としてまとめることができず、ピノキオをベースにするという先祖返りでお茶を濁し、「ファンタジー」として処理するしか方法を見出せなかったということなのでしょう。ジゴロジョー登場以降のディビッドの迷走は、そのままスピルバーグの迷いと構成力の限界を感じさせます。

 そして本来人間になることを願ってやまなかったディビッドは、人間の母親の死体と横になって一緒に眠るという全く意味不明のラストを迎えることになります。こんなことなら、単純に魔法(あるいは宇宙人のオーバーテクノロジーで)人間になりました、そして過去に戻って家族と幸せに暮らしましたという結論の方が、一般の入館者を感動させることができたのでないかという気がしてなりません(つまり「アトム今昔物語」ネタですね。もしかしてスピルバーグはこれを読んでいなかったか???)。・・・少なくとも「宇宙のひだには過去の全ての記憶が蓄積されており、それを一日だけ復活させることができるが、一日過ぎるとそれは永遠に失われてしまう・・・」なんて訳の分からない戯言よりは、よっぽどすっきりするというものです。本編のラスト以降、デイビッドが眼を覚まして母親の死体を見て、その後どうなったか想像すると、とてもやりきれない気持ちになります。そう思いませんか?(それとも、デイヴィッドも自主的に永遠の眠りにつく、つまり死ぬことによって「死ねたから人間なんだ」というオチなのでしょうか?)

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コメント

あれは宇宙人じゃないのに。

投稿: | 2016.07.02 05:26

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