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「忘却の旋律」(第六・七・八話)感想文(ネタばれ注意!!)

 「忘却の旋律」は、ある意味、榎戸洋司の総決算とも言うべき作品です。監督の錦織博とキャラデの長谷川眞也はウテナから、メカデの貞本義行はエヴァンゲリオンから(しかしなぜキャラデではないのか??)、モンスターデザインの出渕裕は榎戸先生がラーゼフォンの脚本を書いてあげたお返しに、それぞれ集まってきました。本来なら、これで完璧!、と言いたい所なのですが…

 本作の演出が他の榎戸作品と比べて弱い、というのは以前にも指摘したことですが、要因としてはやはり長濱博史の脱退がかなり響いていると考えられます。長濱博史はほぼ全ての榎戸作品の作画・演出に入っているアニメーターですが、特に「少女革命ウテナ」ではコンセプトデザインとしてクレジットされていました。あの薔薇がくるくる回る演出は、この方の発明ですね。それと同時に、近年の大地丙太郎監督の主要作品にもほとんど参加しており、「十兵衛ちゃん」「今そこにいる僕」「デジキャラット」「フルーツバスケット」などを手がけました。十兵衛ちゃんが、強力にウテナの影響を受けていたのは、間違いなくこの方の影響ですね。で、「忘却の旋律」が放映されているこの大事な時期に、よりによって同時に大地監督の「レジェンド~蘇る竜王伝説」が放映されており…そっちへ行っちゃったわけですね(泣)。過去にも「機動戦士ガンダムF91」が、“ファーストガンダムの主要スタッフを再結集”というふれこみにも関わらず、設定・脚本のスタッフを総入れ替えしてしまったばかりに、惨憺たる出来になってしまったことが、少しだけ脳裏をよぎりました。よもやとは思いますが…。

<第六話>
 ダムにでかい眼の絵を描く…となれば、クライマックスは決壊(涙)しかないですね(笑)。ダムに手を突っ込んで決壊を食い止める話は、多分筆者が小さい頃に読んだことがあるオランダの童話、「ハンスブリンカー」(だっけ?)辺りが元ネタだと思われます。貧乏人(主人公)は金持ちに奉仕するのが当然、というとても嫌な話でしたが。手を突っ込みっぱなしの少年もどうかと思うけど、穴が開きっぱなしのダムをほったらかしにする村人も、かなりきてます(笑)。おそらく高度成長社会の中で、家族(子供)も省みず働くエコノミックアニマルを風刺しているんだろうと思うんですが、今ひとつピンときませんね。

 今回の細かい点。モンスターユニオンのみりさんは、何でもドルで換算してしまう人。やっぱアメリカ占領下の世界では、円は価値が無いんだろうな。小夜子は今回もラムネを飲んでます。萌えのサインですよ!!。第三部を見てからこの話を見直すと、ユニコーンシリーズに対するコメントや、角のペンダントなど、伏線の展開は相変わらず完璧です。こういうのを、本当の“構成”というのだと思うんですが。

<第七話>
 今回はみりさんがボッカ君を色仕掛けと500万ドル(後に520万ドル(笑))で誘惑します。やっぱりドルは価値があるんだね。でも「いい生活」をしているはずのみりの家が、やけに成金っぽくて貧乏くさいのは、やっぱり非占領民の限界なんだろうなあ。あるいは敗戦直後のイメージなのか。鼠講システムと働きマウスの関係は、かなり抽象的。榎戸先生は、子供を大切にしない大人に相当批判的です。この辺りも高度経済成長時代のステレオタイプ的なイメージなのか、それとも過去の鬱々たる思いなのか…。

 小夜子は相変わらずラムネを飲んでます。こうなると、単なる好物なのかも(笑)。遠音もかなり屈折したキャラに描かれていますが、この章では詳しいことは分からないまま。

<第八話>
 この話では、遠音とアイバーマシンの初めての出会いが描かれます。が、遠音がメロスの戦士を憎む理由が今ひとつ良く分かりません。遠音の憎しみの対象が、モンスターではなく、裏切り者の村人に向かっていることが理由のようにも思えますが、そもそも作品の方向性自体がそちらを向いているので、それほど飛び抜けた理由とも思えません。自分がメロスの戦士であることから逃げ出した、ということを言いたいんだと思うんですが…。結局全てを他人任せにしていた村人は、村を洪水で流されちゃいました、って安直な落ちで良いんですかね。ところで、メロスネームって、なんだ?(笑)

 細かい所を。遠音と画家の芸術論は、榎戸先生の本音が見て取れるような気がします。榎戸先生はどんな難解な作品を作っても、決して謎解きをしてはくれません。あくまでも受け取り手の感性を重視する姿勢です。それが作者の意図とどれほどかけ離れていようとも。筆者は榎戸先生のこうした姿勢は、受け取り手に対する諦めの気持ちが多く含まれているのではないかと思っていたのですが、本心からこうしたポジティブな気持ちを持っているとすれば、心強い限りです。ロボット怪獣が巨大化するのを見てボッカが「バブルな奴め!」というのは、ちょっと素敵。そろそろ全編を通して駄洒落大会の様相を呈し始めます。みりさんの「弱い矢は、折れてしまえ!」は前編のエピソードと絡めて。プロなら、この程度の伏線は張れて当然だと思うのですが、実際にはこの程度の伏線すらきちんと処理できない作家は非常に多いです。

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